前途多難の撮影同行

 前回のブログでは私が担当することになった、有名無料クーポンマガジンの初めての撮影研修で、大手企業のスケールの大きさを目の当たりにしたことについて書きました。

今回は先輩に同行しての撮影研修について触れていきましょう。


当時の撮影における移動手順は次の通りです。

所属会社がある浜松市東区から最寄りの天竜川駅まで徒歩(約15分)→天竜川駅から浜松駅まで電車移動(約5分)→浜松駅から大手企業の営業所が入っているビルまで徒歩(約5分)→営業所内で必要機材を貸してもらい、前日にメールでもらった撮影依頼シートに記載されている店舗へ移動。


 さて、撮影先が全て浜松街中の飲食店の場合は徒歩移動で問題ないのですが、一日に4〜6件撮影するなかで郊外の店舗がある場合は営業所にある電動自転車を使用しなければなりません。

この電動自転車は営業所内にバッテリーが保管されていて、使用する前に自分で自転車に取り付けるのですが、中にはヘタっているものや充電がされていないものが混じっていたりしました。

経験ある方もいるかもしれませんが、バッテリーの切れた電動自転車のペダルは想像以上に重いのです。

平地ならまだしも、登り坂は本当にきつい!

研修当初はどのバッテリーがヘタっているとか、どこを見たらバッテリー残量が分かるとか確認もせずに持ち出していたので、撮影の移動中にバッテリーが切れてしまい大変な思いをよくしたものです。


そして、郊外の店舗のなかでも自転車で移動できない地域の場合や撮影移動時間が極端に短い場合はタクシーでの移動も許されています。

実は、ここにも大手ならではの壮大なリスクマネジメントが隠されているのです。 一見すると、大都市圏以外の地域での移動はタクシーを利用するよりも自家用車を使用した方が圧倒的にコスト削減に繋がると思ってしまいがちですが、やはり大手の考え方は違います。 このクーポンマガジンの撮影に携わるカメラマンは1日あたり全国で200名以上。

仮にそのカメラマン全員が自家用車で移動をしたとして、事故やトラブルが起こる確率を算出すると、その際に企業が負うであろう弁護士費用を始めとする賠償責任額はカメラマンがタクシーで移動した場合の交通費より遥かにコストが上がってしまうという理由からなるものです。


 少し話が脱線してしまったので、もとの話に戻すことにしましょう。

撮影前日に依頼シートが手元に届いたら、最初に私たちカメラマンがすることは記載されている住所をもとに店舗所在地を調べることです。

今はWebサービスが普及しているので、各店舗の所在地は何らかのWebページを検索することで簡単に確認することができますが、私が研修を受けていた2007年当時はそのようなものはほとんど存在しておらず依頼シートの住所を頼りに、地図で探すしか方法はありませんでした。

しかし、その依頼シートに記載されている住所の番地が違っていたり、店舗が移転していて住所自体が古かったりと、初めて撮影で行く場合そのお店が確実にそこに存在しているか自分の目で確認できるまでは安心することができなかったのです。

実際のところ同行研修初日にも、記載されている住所をどんなに探しても見当たらず、店舗へ電話をして初めて場所が分かったという経験をして、これが一人の撮影だったらと考えただけでゾッとしたのを覚えています。


同行研修も何回か経験し、先輩が撮影し私が見学する研修から、私が撮影し先輩が見守るという研修にステップアップした時のことでした。

各店舗での与えられた撮影時間はカット数や撮影対象によって異なります。

料理単品や内観と外観はそれぞれ1カットあたり10分程度で設定されており、料理のコース写真は1カットあたり20分程度で設定されています。

例えば外観1カット、単品料理1カット、コース1カットだったら10分+10分+20分に準備と撤収の時間をそれぞれ10分ずつ足した合計60分で設定されて依頼シートに記載があります。

しかし、いざ時間通りに店舗に到着してみるとお店は真っ暗で鍵がかかっています。

お店に電話しても誰も出ず、人が店内にいる気配はありません。

どうしたものかと考え、マニュアルに沿ってお店を担当する営業マンに電話連絡をしたところ、お店の方の携帯に直接連絡をとってくれたのですが、店主は撮影のことをすっかり忘れていたらしく、直ぐに向かうのでお店の前で待っていて欲しいとのこと。

しばらくして、店主が到着したのは撮影開始時間から30分を過ぎた頃でした。

今から準備するからちょっと待っててと言われ、その間に外観の撮影を済ませましたが料理が出てきたのは撮影終了の15分前。

しかし、研修を受けただけの私は、単品の料理はまだしもコースなんてお皿を並べるだけで15分はかかってしまいます。

困った私を見かねて先輩が撮影を代わってくれたのですが、その手際のいいこと!

あっという間に単品料理とコースを撮影し、店主への撮影データ確認と機材の片付けまでを済ませ、予定時間通りにお店を出ることがきてしまったのです。


先輩すげー!!でも自分には絶対無理だ!!!


実は、こういうアクシデントがあった際にもマニュアルが存在しています。

まずは店舗を担当している営業に連絡をし、確認をとった上で、お店側に撮影対象の優先順位をつけてもらい、時間の範囲内で出来る限り撮影するという手順になります。

しかし先輩からは、料理の準備に時間がかかったり、撮影自体を忘れているお店、いざ行ってみたら依頼シートに書かれている撮影点数より大幅に多いなんてことはよくあることだから、お客様に納得してもらう為にはアドリブで乗り切るしかない!とあっさり言われてしまいました。

大切なのは、次のお店の撮影開始時間に遅れずに到着することで、アクシデントがあった際は次のお店までの移動時間も含めて自分で考えて最善の行動しなければならないのです。


このように現場で起こる様々なアクシデントやトラブルに対して、全てをマニュアル通りに対応するのではなく、その都度、自己判断で解決していかなくてはならないことを先輩との同行研修で学んだのでした。


ちなみに私がアドリブを身につけるまでには1年以上かかった気がします。

そして、現在では45分あれば8種類のコースを涼しい顔をしながら撮影できるようにまで成長しました。


つづく


次回はいよいよ一人での撮影デビューです。


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