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執筆者の写真Hiroaki Sugise

大手企業のスケールの大きさを研修で知る

 前回のブログでは雇用主から無茶振りをされ、レイアウト編集業務の他に、誰もが知る某有名無料クーポンマガジンの撮影を担当することになってしまったところまで書きました。

研修や同行、そして撮影については、あまり表に出ることのない裏側部分にも触れることになるので今回からは固有名詞を極力避けながら書くことにしましょう。


 私が撮影をすることになってしまった当時の無料クーポンマガジンは、現在とは違いWebサービスはまだ存在しておらず、フリーペーパーのみの媒体でした。

今でこそヘアサロンやリラクゼーションなどのビューティー枠がありますが、当時はグルメのみの掲載だったので撮影の対象は飲食店に限られます。


 初回研修は無料クーポンマガジンを運営する大手企業より、各都道府県の撮影委託と管理を一任されている東京の人材コンサルティング会社から研修専門の担当者が派遣され、丸1日かけて研修が行われます。


まず、何よりも驚いたのはマニュアルが徹底されていること。

機材はその大手企業から一式が支給され、それらはどの都道府県地域でも全く同じものを使用します。

初歩的なカメラの設定から周辺機材の使い方はもちろん、撮る角度や料理の並べ方、出向いた先でのお客様との会話と接し方までもが事細かに記載された分厚いマニュアル本があり、私のようにカメラを触ったことがない、全くと言っていいほど撮影に無知な人間でも、その撮影マニュアルを読み進めることで、あっという間に現場に出ることが出来るようになるのです。

とは言え、触ったことのない機材をたった1日の研修で使いこなせるようにはならないので、初日はひたすら本に書かれていることを理解することから始めます。


そもそもこの撮影マニュアルは、カメラマンが現場に出ることで背負うリスクを回避する為のものなのですが、大手ならではの壮大なスケールのもとに管理されていたのです。

独特で面白いのが、その無料クーポンマガジンに掲載される料理写真は全て、お皿とお皿との間隔を空けず画面いっぱいに料理やドリンクを並べ、画面外へお皿をはみ出させ、あえてお皿の縁が見切れている状態で撮る方法です。

それは「H◯t P◯p◯◯r的撮り方」と名付けられ、現在では広く知られています。

そして、お客様がなんと言おうと当時はその撮り方以外での撮影はNGという厳しいルールがありました。 もし、それを守れなかった場合は掲載が出来ないので再撮影になってしまうのです。

ちなみに現在は、Instagramなどの写真に特化したSNSが普及したこともあり、よりお洒落に見せる為、ある程度自由な画面構成が許されています。


このように画面構成までをもマニュアル化し徹底して管理することで、それぞれのカメラマンの個性を写真に影響させないようにするのです。

これはたった1日で、200名以上のカメラマンが全国で千件にも及ぶ飲食店を撮影するにあたり、トラブルやお客様からのクレームを最大限少なくするという理由からくるものでした。

今でこそ、個性を押し殺して撮影するなんてクリエイティブでも何でもない!と思ってしまうけど、当時の私はそんなことを感じることはなく、むしろマニュアルを守ることで比較的簡単に写真が撮れるならそれに越したことはないと思ってしまっていたのです。


 初日の研修を無事に終え、翌日の業務終了後からは先輩に付き合ってもらい深夜まで撮影の特訓に励むようになります。

そして数日間の特訓で、お店に入るところから撮影を終えてお店を出るまでの流れを何となくつかみ、カメラを含めた機材の扱いにも慣れところで、いよいよ次は先輩に同行して実際の撮影現場での研修です。

撮影マニュアルをしっかり頭に叩き込んでおけば、現場に出ても大抵のことはクリアできるだろうとその時は思っていました。

しかし、その同行研修でマニュアル本に書かれていることが、いかに机上の空論だったのかを痛感することになるのです。


つづく


次回は、「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!!」という文句の通り、同行した現場で起こった様々な事件に少しずつ触れていこうと思います。


GRAPHYS Sugise



2017年撮影 一坪のお茶席より
2017年撮影 一坪のお茶席より

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