結婚式なんて

 前回は私と結婚写真撮影との出会いについて書きましたが、今回は結婚式集合写真のアシスタント初日について書くことにしましょう。


 初めての撮影現場は袋井市にあるレストランでのウェディングです。 こちらのレストランと、私が勤めるフォトスタジオは業務提携しており、結婚式の写真撮影全般を任されています。

結婚式における写真撮影業務は主に3つに分類することができます。

それぞれが本当に意味のある素晴らしい撮影なので、ここで本質を伝えようとしても書ききれないので、詳しくはいつか改めて書くことにして概要だけ。

まずは、結婚式当日以外に撮影する前撮り(場合によっては後撮りもあります)。

前撮り写真は芸術的要素が高く、フォトグラファーが新郎新婦に対して様々なポージングを指示し撮影を進めていきます。

主に屋外ローケーションで撮影することが多く、フォトグラファーにとっては光を読み、構図を決め、新郎新婦の表情を引き出しつつ撮影しなければならないのでスキルと個性が問われます。

次に結婚式を1日まるっと撮ってアルバムなどにするスナップ撮影があります。

ドキュメンタリーとして撮影するフォトグラファーが多く、またそのスタイルが支持されています。

スナップ撮影は本当に過酷で7〜8時間休むことなく撮り続けるので体力勝負なところもあります。

実際、夏場のスナップ撮影では大量に汗をかくので1日に3kg体重が落ちてしまうこともあります。

そして、集合写真を含む型物と呼ばれる記録的要素が強い撮影があります。 型物は名前のごとく、型にはまった形で撮影しなければならないのですが、この「型」というのは決まりごとが事細かに設定されているので覚えるだけでも一苦労なんです。

新郎新婦をはじめとする正装での正しい振り付けに始まり立たせ方や顔の向き、カメラの設定や高さ、光の向きに背景の処理など出したら切りがありません。


さて、結婚式の集合写真のアシスタントですが、私が教わることになったのは勤めていたフォトスタジオに撮影協力してくれている30代後半の男性フリーフォトグラファーでした。 先輩たちが巨匠と呼んでいたので、立ち居振る舞いの他に素晴らしい技術や経験値を当時からお持ちだったのだと思います。

その巨匠から初回に命じられたのはアシスタント業務ではなく、ただひたすら結婚式を見学するというものでした。

今思えば、私が結婚式について何も知識がないと考え、まずは結婚式がどういうものなのかを身を以て体感させようという、優しさからからくる判断だったのだと思います。


しかし実は、写真を始める数年前に結婚式場で新規獲得の営業を半年ほど経験したことがあり、結婚式に対しての知識はある程度持っていました。


私はあえてそれを会社に対して伏せていたのです。


というのも、以前勤めていた会場はいわゆるブラック企業というやつで、働くスタッフは皆疲弊しきった状態で結婚式に携わっていたせいか、働いていても結婚式に感動したことがありませんでした。

金太郎飴みたいに、どの結婚式を切り取っても同じものばかりで、たった半年しか勤めませんでしたが辞める頃には飽きてしまっていました。

そんな経験があったからか結婚式というものに魅力を感じることがなく、深く足を突っ込みたくなかったというのが本音でした。

結婚式の表舞台はとても華やかですが、裏舞台はとても過酷で圧倒的にブラック企業が多いと知っていたので、どうせこのレストランの結婚式も同じだろうと思っていたのです。


しかしそれは大きな間違いでした。


そのレストランで働くスタッフは誰もが楽しみながら働いていて、接客するときの笑顔が作り笑顔ではなく心の底から楽しむことで自然と溢れ出す笑顔やお客様へ接する真摯な姿を目の当たりにした私は、これが結婚式なんだ!と、胸が熱くなるほど感動し、見ず知らずの新郎新婦なのに涙がとまりませんでした。

スタッフが協力し合い、楽しみながら感動しながら創り上げる結婚式は、以前に私が勤めていた会場で経験してきた結婚式とはまるで違っていて、これが本当の結婚式なのだと大きな気づきを得ることができました。


巨匠のおかげで結婚式を客観的に見ることができ、それまで結婚式に対し抱いていた感情と全く違った感情がこの日、私の心に芽生えたのです。

結果、巨匠のもとでのアシスタントデビューは写真とは全く関係ない部分で結婚式に感動できたことで、恐怖しかなかったアシスタント業務でしたが、俄然やる気が湧いてきました。


好きではなかった結婚式が、たった1件の結婚式で大好きに変わってしまった私は、それに携わることに対し改めて魅力を感じ始めるのでした。

そしてその想いはアシスタントを重ねるごとに加速していくことになります。


つづく


次回も引き続き、巨匠のアシスタント時代についてです。

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