第二の人生が始まるきっかけ《前編》

最終更新: 2019年9月24日

 前回はダメ営業マンが故に職を失ったお話をしました。

今回はハローワークで紹介された職業訓練学校時代について書くことにします。


 当時、ハローワークで勧められた職業訓練学校のデザイン科はとても人気があり、面接と実技試験を経て合格者のみが入学できるというものでした。

そもそも私がデザイン科を選んだのも短絡的な理由で、小さい時から絵を描くことが好きで幼稚園の時に動物園で描いた象の絵が何かの賞をとった記憶があったこと、デザインに携わる人たちはセンスが良くてモテそうだし、技術職だがらきっと給料がいいだろうと思ったからでした。

面接では、これから訓練で学ぶスキルを活かせる職に就く気があるかどうかを問われ、実技ではデッサンを2時間。

人に自分の長所を伝え印象良くみせることは営業マン時代に嫌という程教えられたので問題なくパスし、デッサンも他の受験者が描いた絵を回収する時にちらっと見たけど、明らかにその絵よりは上手に描けていたこともあり無事に合格することができたのです。


 入学すると、まずはアップルコンピュータのノートパソコンを自費で購入させられました。

入学した2006年は初代iPhoneが登場する1年前のことで、当時は日本でもApple製品を持っている人は今ほど多くなく、私もAppleと言えば音楽を聞く為のiPodくらいしか知りませんでした。

Apple=グラフィックデザイナーの大半が好むブランドだというのもこの時初めて知ったくらいでデザインについては全くの無知な状態からのスタートです。


「学生であって学生でない。」


この言葉が意味するように通常の学校とは違い、初日からのほほんとした雰囲気は全くなく1時限目は世界美術の歴史を学ぶことからはじまりました。

その後も世界美術の歴史の他に、商業デザインを学びつつ、数週間から1ヶ月かけて完成させなければいけない課題をいくつも与えられ、同時進行で様々なものを工作したり、架空の広告制作をはじめ、実際のコンペなどへ応募する作品を制作したりと1日があっという間に終わってしまう日々がはじまるのでした。

加えて、休日も提出期限に間に合わせるべく遅れている課題の制作を進めたり、先生に促され全国の美術館や博物館へ足を運び(もちろん全て実費)、感性を養う時間に当てるなど休日とはいえど息つく暇なく過ぎ去っていく毎日です。

とは言え、社会人になってからこんなにも充実した毎日を過ごしたことがなかったし、学ぶことで知識を得ることがこんなにも楽しいと気付けたりと、生かされているのではなく生きているんだと心の底から実感できる日々でした。

そしてデザイン漬けのこの日々は、のちにフォトグラファーになる私の礎となるとはこの時は思ってもいませんでした。


 学校では3名の先生からそれぞれの専門分野を学ぶのですが、その先生が揃いも揃ってとても厳格な人柄だったのが印象的で、それも何故かというと通常は専門学校で2年かけて学ぶことをたった半年で習得させ、送り出さなければいけない使命を担っていたからなのだとだいぶ後になって気づきました。

先生方の指導は本当に厳しく、涙を流す生徒や、その辛さに耐えきれず自主退学する生徒もいたくらいです。


 私は3名の先生のなかでも特に生徒に対して厳しく指導する先生がとても大好きで、与えられた課題を誰よりも評価してもらえるように励んでいた自分がいました。

結果、デザインという世界にどんどん夢中になっていき学校では教えてくれない深い部分まで自分で調べるようになり、自ら率先してスキルを身につけるようになっていたのです。


 その中でも特に興味を持って深掘りしたのが、のちに今の仕事と直結することになるPhotoshop(フォトショップ)というソフトウェアです。

Photoshopは主に写真編集(フォトレタッチ)としての役割を担うソフトウェアで、画像加工、イラストレーション、印刷業界などあらゆる画像分野で使用されていて、この分野では代表的な存在になります。

写真を編集する上では世界共通で使用されており、このPhotoshopの操作技術と知識を得ることはフォトグラファーのみならずグラフィックデザインやウェブデザインをはじめとする業界ではIllustratorと並んで重要だということです。


半年間でPhotoshopの操作をはじめデザインの基礎や歴史を楽しみながら学べたことで、自然とフォトグラファーになる為の準備が整っていたのかもしれません。

でも、この時点でもまだ自分がこの先フォトグラファーになるなんて知る由もありませんでした。


後編へつづく


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